学長メッセージ
予測困難な時代に、挑戦し続ける。北見工業大学 ―2024年4月

世界では格差の拡大と分断、環境、食料危機など深刻な課題が山積し、本邦においても少子高齢化、人口偏在、経済停滞など構造的で解決の糸口が見えない問題が立ちはだかっています。未来が過去の延長上にない予測困難な時代となり、大学も聖域ではなく、存在意義が厳しく問われています。しかし、このようなときこそ目先の損得にとらわれず、時間を掛けて問題の本質を追究するアカデミア(学問の世界)が必要だと信じます。
もちろん、昔の大学への懐古や既得権に甘んじることは由としません。進化論を唱えたチャールズ?ダーウィンは、種の起源で「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである」と記しています。
また、保守思想の父として知られるエドマンド?バークは「大切なものを守るためには時代に応じて変わらなければならない」と述べています。北見工業大学はアカデミアの矜持を大切にしつつ、時代や社会の要請に応えるため、挑戦をし続けます。
北見工業大学の新しい挑戦については、教職員やステークホルダーとともに考えを深め、次の3つの観点を重視して具現化します。
- 1. 専門教育体系を、デジタル技術とリベラルアーツにより基礎づけて再構築すること
- 2. 国際社会?地域社会との共創を強化すること
- 3. 新しい“自由で身近な自分の学び”を提供すること
本学は、実り豊かな自然に恵まれた、第一次産業が盛んなオホーツク地域に立地し、“自然と調和し、社会の持続的発展に資するテクノロジー”を主題としています。そのため、工学という学問を創造し、継承することが中心的な役割となりますが、折角の知識も社会で活かされなければ絵に描いた餅です。知識集約型社会において知識が連鎖、拡大していくためには、AIやIoT、データサイエンスなどのデジタル技術が鍵となります。また自然の摂理と相容れない科学技術は社会の持続的発展に寄与できません。そこで項目1.の通り、知識を活かすデジタル技術と幅広い視野、規範的判断力、論理的思考などの社会的基礎教育を工学専門分野が包摂し、集大成する教育体系を改めて構築します。
アカデミアの動的過程は多様性による進化であり、進化のためには多様性、すなわち世界を知ることが必要不可欠です。一方、地域には特徴的で手の行き届く課題があります。豊かさは数や量では無く、また地方や中小無くして中央や大はありません。そこで項目2.の意図は、身近な地域課題に普遍性を見出し、世界の知見を総動員してチームで取り組み、成果を地域社会に還元していくことで、グローバルな社会問題の解決に貢献する、ということです。地方小規模大学の存在意義もそこにあります。
最後の項目3.は、むしろ学びの原点に回帰することかもしれません。予測困難な時代においては、細分化しつつ網羅的で固定的なカリキュラムより、学ぶ側の目的に応じて内容?方法